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2007年7月12日 (木)

UEIはとても平凡で地道なことばかりやる会社ですよ

有り難いことなのかもしれませんが、最近、どうもいろいろな人に期待されすぎているような気がします。
しかも社外の人はもちろんですが、最近はとくに社員・スタッフからの期待をズキズキと感じます。

今日、社外の方にこんなことを言われました。

 「清水さんの会社は面白いことや凄いことが得意なんですよねえ。そういう仕事ばかりで良いですね」

社員にもこんなことを言われました。

 「うちの会社は面白いことを重点的にやってるんですよね」

大変申し訳ありませんが、それは認識が違います。

たまたまどの仕事も面白がっているだけだったり、もしくは仕事と関係ないところで面白いことをしているだけだったり、そもそも面白い仕事しか大々的に宣伝していないだけであって、実際の業務はとても地道で実直な仕事です。

面白い仕事というのは、そもそも面白いだけあって、やりたい人は沢山いるのです。

沢山いるということは、それだけ単価が下がります。会社としては面白い仕事をすればするほど儲からなくなります。

この面白い仕事が持つ特殊な性質についてはかなり以前にこのブログでも触れました。
もともと面白い仕事を沢山の人がやりたがるのは当然です。そのぶん競争がとても激しくなります。

僕は技術者をやめて商人を志した時、ひとつ心に決めたことがあります。
それは

 「人の嫌がることを進んでやろう」

ということです。

人の嫌がること、面倒だなと思うこと、つまらなそうだなと思うこと、大変そうだなと思うこと、そういうことを自ら進んでやることこそが商売の基本です。

大変そうだから、自分ではなくて専門家にお願いしたくなる、つまらなそうだから誰かにお願いしたくなる、そういう仕事を引き受けているうちは、事業は安泰です。僕はそれこそがサービス業における需要の原理だと思っています。

次に僕が思ったことは

 「嫌々仕事をするのはやめよう」

ということでした。

先の言葉と矛盾しているようですが、そうではありません。
どんな状況でも見方を変えれば面白いものに変わっていきます。

たとえば、19世紀の鉄道会社に勤めるある電信技師の話をしましょう。
当時、電信技師といえば花形職業と言われていました。今のIT企業と似ています。

その花形職業である電信技師の仕事は、しかしひどく退屈なものでした。
決められた時間に決められた信号「異常なし」を隣の駅に送るだけ。

まだ若かった彼はすぐに飽きてしまい、かわりに自動的に電信を送る装置を作りました。これはすぐに上司に発見されて怒られました。

それでもめげなかった彼は電信用中継器をどんどん改良していき、最後は電信された電文を文字として表示する電信表示器を発明し、特許を取得します。

その特許を大手電信会社に売却し、それを元でに彼は自分の工場を作りました。

もう誰だかお解りの方も多いかも知れませんが、これは20代前半のトーマス・アルバ・エジソンの軌跡です。

驚くべきことにコンピュータの仕事というのは、ほとんどがとても地味な仕事です。
僕はもともと3Dコンピュータグラフィックスを専門にしていたのでよく思うのですが、画像が1ピクセルも表示されないサーバープログラミングというのはとてつもなく地味な仕事なのです。

とても地味で、しかも経験がないと大変な仕事です。
僕らもいままでに何度もサーバーがダウンして眠ることすらできなくなる夜や、原因不明のトラブルで連日会社に泊まり込むような大事件を経験しています。

そういうトラブルや失敗の蓄積があるからこそ、色々な人が「大変そうだ」とか「面倒くさい」とか思う仕事を引き受けることができるわけです。

これはささやかな自慢話ですが、先日、とある新規サイトを二つ同時にオープンさせました。3キャリアほぼ同時だったので同時に6つのサイトをオープンしたのと同じことになります。ここまではよくある話です。

実は、とあるSNSサイトでは、特定の場所にバナーを張り出すと、一瞬でリンク先のサーバーが落ちてしまうという、「魔のバナー地帯」というのがありました。この「魔のバナー地帯」に広告を出して、落ちなかったサービスはないと言われるほどの超一等地だったのですが、今回、僕らの作ったサーバーは初めて「落ちなかった」サービスとなりました。

この裏側には、これまで何度も自分たちが失敗してきた、失敗の積み重ねが生きています。これはとっても地味な話なんです。お客様からしてみれば、サービスは落ちなくて当たり前。

しかしその当たり前を実現するには、実に多くのことを考えなくてはなりませんし、なにより「これなら大丈夫だ」という「見切り」を付けなくてはなりません。加えて言えば、うちの会社のCMSは当初のバージョンではデータベースの自由度と拡張性を優先して速度をある程度犠牲にするような設計だったからなおのこと喜びはひとしおです。

僕はCMSの基盤になるZEKEというシステムの設計者として、どうしても譲れないこととして「データベースの柔軟性と拡張性」を第一に挙げました。この制約は、システム負荷の分散を設計する人にとってはとんでもなく大きな負担となりました。

世の中のたいていのXMLデータベースやRDFデータベースは、単にパフォーマンスが低いという理由で敬遠されているなかで、RDFデータベースを使ったまま、しかも従来のSQLデータベースでも落ちてしまうような大規模なサイトとトラフィック(通信回線の混雑)に耐えうるようなシステムを、従来と同じ予算で作れ、という命令は、我ながら少々無茶だったのかもしれない、と今なら思います。

しかし僕にとってCMSの拡張性と柔軟性を放棄することは、前時代に戻ってしまうことなので、絶対に譲れませんでした。同じ速度で動くなら、拡張性が高い方がいいに決まっています。サイトというのは、作って終わりということは絶対にないのです。それが成功するものであればあるほど。

水野君率いる開発部隊は、普通の人ならノイローゼになるような難問、僕の掲げた無茶な要求を満たしながらどうやって難攻不落のシステムを作り上げるか徹夜を重ねました。これがその成果です。でもこれって凄く地味ですよね。

電信中継器の改良も、サーバーやCMSの改良も、それそのものは外部から見えない、とても地道で地味な仕事です。

僕がわざわざ書かなければ、そんなことはうちの他の社員ですら知らないことです。
それくらい地味なことなのですが、そういうことをコツコツ積み上げていくことこそ、僕は商いの正道だと思っています。

平凡な仕事を続けるには勇気と根気が必要です。
平凡な仕事で非凡な成功を成し遂げる努力というのは、野球で言えば補欠のメンバーが放課後人知れず練習をしているようなものです。脚光を浴びているわけでもなく、練習を重ねたからと言って試合に出れる保証もない。けれどもただ己を磨くために地道な練習を続けていくわけです。

非凡な成果とは、ただただ平凡な仕事の積み重ねの上にあるものです。

うちの会社で面白い仕事ができている人達、仕事にはなっていないけど面白いことができている人達というのは、みんな平凡な仕事を誰よりもきちんとやり、誰よりも沢山数をこなしている人たちです。

たとえば、ルミネスというゲームの携帯電話版は弊社で作っていますが、これを全ての機種で動作するように調整するという仕事は、考えられないくらい大変な仕事です。できれば逃げ出したいような仕事です。このゲームは、音と完全に同期していないとゲーム性が損なわれてしまうため、全ての機種で微妙な微調整が必要だったり、精緻な動作確認が必要だったりするのです。もちろんこうした仕事は、携帯電話のアプリを提供している会社であればどこでも地道にやっていることです。

これを全て地道にこなしているのは布留川君です。本を12冊も書いて、ビル・ゲイツから褒められているような人間が、携帯電話ゲームの機種対応を地道に確実に、しかも素早く行っているのです。その他のゲームに関しても、彼が作ったものに関しては全て最後まで責任を持って新機種に対応させています。これは一見すると簡単なようで、とてつもなく大変なことなのです。

そういうことを涼しい顔でできるから、彼は自分の好きな研究、面白い仕事ができるわけです。基礎は地道で平凡な仕事でしか身につきませんし、そこで身についた蓄積があるからこそ、面白いことができるのです。

先ほどの高負荷分散システムを作った水野君もネットタンサーの改造や、電光掲示板RSSリーダーを作ったりしているのはごく一部の限られた時間です。誰よりも沢山普通の、当たり前の仕事をこなしています。新婚にもかかわらず、昼夜問わず、土日も欠かさず会社に来て、常に締め切りに追われながら働いています。社長の僕以上に自分の私生活を犠牲にしてくれています。家で休む代わりに、気分転換にそうした機械をこしらえているのです。

僕らが普段やっている仕事はとても地道で、とても目立たない仕事です。
僕のBlogに自分で書くようなことというのは、そうした本業とはほど遠いところを敢えて選んで書いているので、うちの会社が面白いことばかりやっている面白い会社だと思われてしまうのは仕方がないことなのかもしれませんが、別に面白いことばかりやっているわけではないですし、どちらかというと、ふつうの人たちが「つまらない」「キツイ」「大変」と思っていることを喜んでやる会社です。僕らはそこに喜びを見いだす術を知っているのです。好きこそものの上手なれ、です。

技術は日々進歩していきますし、同業他社も常に進化し続けるので僕らが常にトップクラスにいるかどうかはわかりません。

けれども誰よりも仕事が好きです。コンピュータが好きです。
いつも付き合う女の子に言われてました。

 「コンピュータが一番で、私はその次なのね」

コンピュータが好きだということに関しては絶対の自信をもっています。

コンピュータが好きだから、他のひとから見たら、とても地道に思える仕事も真剣なおもしろさを感じて取り組んでいます。

きっとそういう会社は沢山あると思うのですが、プログラマーというと、すぐ「つらい」とか「キツイ」とか「報われない」とかという形容詞がつくような気がします。

僕はプログラマーは大変だけど、これほど楽しい仕事はないとも思っています。

最後にまとめ。

UEIは面白い仕事をやる会社ではありません。
平凡で地道なことをめちゃくちゃおもしろがってやる会社なのです。

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