まさかゲイツがロボットの可能性に気づくとは
夜中にフランス行きの航空券が買えるって凄いことだと思いました。
まあ要するに、フランスの航空会社は夜中が昼間なわけで、むしろ夜中に買う方が簡単なわけなのですが、それを実現する裏には、インターネットの普及と、それを使った予約システムと決済システムの確立が必要なわけです。これが携帯からできる。マイクロエレクトロニクスって相変わらず凄いなと思います。
そんなマイクロコンピュータ革命を主導したウィリアム・ゲイツ三世さんが、珍しいニュースに出ていました。
Bill Gates氏が注目した,日本の「自作ロボット・キット」
ゲイツに近藤科学のロボットキットを送ったのは言わずと知れた楠さんなわけだけど、その頃ロボットがいつか普及すると言っていたのは、ロボット業界のヒトも含めて殆ど居なかったように思います。
僕の記憶では、3年前のSoftdrink(鈴木健氏が主催するスーパークリエイターを中心とした会合)で、田中泰生と僕とで偶然「これからはマイクロコンピュータではなくてマイクロロボットの時代だ!」と言っていて、その場にいた楠さんが「ゲイツにKHR-1送ってみるよ」と言ったり言わなかったり。
その後、僕の会社ではZMPのnuvo向けのアプリケーションの開発に着手したり(残念ながら未だに完成していませんが) 、田中泰生さんのRラボではロボット向け振り付けソフト「ロッテンマイヤー」を開発したり、楠さんのところではその名もMicrosoft Robotics Studioを開発したりしていたわけで、全く東京の片隅で血気盛んな酔っぱらい達の夢物語が、世界の富豪に『すべての家庭にロボットを』とまで決断させるとは、凄い話だと思うわけです。楠さんは自分からは謙遜して言わないと思うけど。
僕はドワンゴに居た布留川君に「いつまでも携帯のソフトなんか書いていてどうする。これからはロボットの時代だ」と言ったら「良し解った」と言ってうちの会社に転職してきて、気がついたらロボットプログラミングの本まで書いてるし、うちの社の課外活動としてやっている電脳空間カウボーイズでも、ロボットを扱ったりしています。
ロボットの何が面白いかと言うと、その圧倒的なまでの説得力でしょう。
「自律する機械」というのは、古くからの人類の夢で、それは神によって創られた人間が、みずから自律機械を創ることで神になりかわろうとする根源的な欲求があって、それを果たすために人は神を目指すのかも知れません。
持ち運びできるモバイルデバイスや、単独で通信機能と計算機能を持つ携帯電話に僕が魅せられたのは、要するにその「機械として完結している点」であったり、「自律機械へのステップ」であったりするのかもしれません。
僕はもともと人工知能に興味があって、小学生の頃にパーセプトロンやアソシアトロンを作ったり、中学校の展覧会では絵が描けなかったのでセル・オートマトンによるキネティックアートを展示したりしていましたが、本職の研究者になるほど賢くはなかったので、適当に似たような仕事をして飯が食えるゲーム開発の世界に行ったクチです。
でも常にその根底に欲求としてあったのは、「人と同じように思考する機械を作りたい」ということで、当時見ていたイギリスのテレビドラマ「MAX HEADROOM」のように、ヒトの人格をコンピュータで再構成できないか、ということに熱中していました。
だから中学の進路相談の時も「将来なにをしたいか?」と問われ、ハッキリと「人格の数値化と再構成をしたい」と答えたものです。我ながら若かった。
もちろん当時のコンピュータの能力ではぜんぜん無理だったわけですが、インターネットの普及と一般化によって少なくとも知識情報だけは自由に手に入れることが出来るようになり、そこからなにか意味のある知識を取りだそうという試みも数多く行われるようになりました。
Googleがまさしくそうですし、Sagoolやkizasiもその手のものだと思います。
大人になると解ってきたのは、「人間の脳の中身は思ったほど解明されていないし、本当に人格を数値化したり再構成したりするにはまだまだ時間がかかりそうだ」ということでした。
しかし、目的を変化させれば、それでも十分なにかの役に立ちます。
僕は今の産業用ロボットがかつてのメインフレームに相当するもので、KHR-1のようなマイクロロボットが、かつてのマイコンに相当するものになるのではないかと思っています。
今のロボットはただヒト型をしていて動くだけですが、明らかにそれは単なるラジコン自動車よりもヒトにインパクトを与えます。
未だに忘れられませんが、もう7年も前だったか、パシフィコ横浜で開かれたROBODEXの、空前の混雑模様。
しかも、ロボットのイベントであるにも関わらず、おじいさんやおばあさん、小さい子供まで、あらゆる年代、あらゆる職業の人たちが、ホンダのP3をひと目見ようと集まってきました。
どのくらいの混雑だったかというと、筑波から来た友人は1時に会場について行列で4時間待っていたらそのまま閉館してしまったくらいの混雑です。僕も人生であとにも先にもあんなに並んだことはありません。
それでも、ラジコン操作とは解っていても、P3が立ち上がり、ゆっくりと、しかし確実に歩みを進める様は、ただただ感動としか言う他はなく、僕はそれを見て胸に熱いモノがこみあげてきて、気がつくと涙が流れていました。
それは新しい生命の誕生を目撃したことに感動したのか、それを創り出したホンダに感動したのか、ホンダを生み出した日本という国と人類に感動したのか、一言で語り尽くせませんが、とにかくそれはただただ感動と呼ぶほかはなく、それは僕だけではなくてその場にいた誰もが共有した感動でした。
ラジコン操作のロボットですらこれだけの感動があるわけですから、僅かでも知性回路が付加されればその可能性はさらに飛躍的に広がると思います。
知性回路といえば、バンダイロボット研究所のネットタンサーが凄い割り切りでロボット化していますが、これは知性回路を内蔵した「ネットワークユニット」と、運動回路と各種センサー、モーター類を独立させた「タンサーボーグ」のふたつの構造から成り、ネットワークユニットが知性的なプログラムを実行し、タンサーボーグに通信で命令を送信すると、タンサーボーグが実際に動く、という大脳と小脳のような役割分担をしています。
これが未来のロボットには不可欠な考え方で、運動能力自体はEMMA-U0Aがそうであるように、ガリガリのアセンブリ言語で極限までチューニングした方が良くて、しかし知性回路がないとそれは単なるサル以下の動物になってしまいます。
運動を司る運動回路と、知性を司る知性回路の組み合わせでひとつのロボットシステムを構成する、というのが今後主流になるでしょう。
しかしヒト型ロボットの知性回路化とその応用方法については、なんと誰もろくに考えていないのです。
今までは安定して歩くだけで大事件だったので、それは仕方がないのかも知れませんが、誰もが手に入れられる小規模なソフトウェアプラットフォームが用意されることで、知性回路とロボットのあり方というのがこれから研究される時代に入るかも知れません。
バンダイロボット研究所では、先般、ネットタンサーの通信仕様が公開され、なぜか自走する花育てロボット(写真)というのが改造例として載っていました。
これもまた、知性回路としてネットタンサーを使い、運動回路としては秋月電子のAKI-H8を用いた二段構成で、運動回路に対して知性回路が干渉しながらシステム全体が駆動するという仕組みです。
電脳空間カウボーイズでも、レイチェル仙石というロボットが登場し、Wikipediaを調べて読み上げたり、Twitterのメッセージを読み上げたり、その他の質問をすると「ムズカシナー」と悩んだりしていますが、ロボットの知性回路には無数の可能性があって、世の中ってどんどん面白くなるなあと思った今日この頃です。
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