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2006年5月 5日 (金)

0を1にする力と1を10にする力

最近になって、思い出したことがあります。

誰が言ってたか忘れてしまいましたが、「0を1にする能力と、1を10にする能力は違う能力だよ」という言葉です。

小室哲哉あたりだったかもしれません。

凄く能力があるプログラマーがいたとして、プログラマーの評価というのはどのようにされるべきでしょうか。

・バグの少ないコードを書く
・最適化されたコードを書く/またはコードの最適化が上手い
・保守性/拡張性の高い設計をする
・コードを書くのが早い
・バグの発見と修正が早い
・プログラマーとデータマン(プログラム以外の素材作成者全般)の作業切り分けが適切である/上手い
・仕様書をきちんと早く正確に書ける
・プログラムのドキュメント化をきちんとできる
・最新の技術に対する順応性が高い
・新しい言語や技術環境に対する順応性が高い
・洋書を読み、すぐに自分のプログラミングに反映することができる
・プライドが高く、定評あるライブラリや技術環境しか使わない

まるで、「ザ・スーパープログラマー」です。恐ろしいことに弊社ではこれを全て満たすプログラマーが何人か居ます。

これは、「1を10にする能力」です。

「1を10にする能力」でお金を稼ぐためには、とにかく下請けをやることです。
誰かからの命令を待ち、それを最大限のスピードで最大限実行する。それがスーパープログラマーです。

しかし、「1を10にする能力」をもったスーパープログラマーは、大企業に入るとあまり能力を発揮できません。
大企業では、たいていの場合、与えられた仕事以外になにかするのを原則として禁じられます(ごく僅かな例外はあります)。そして与えられる仕事の大半が、他者との折衝や調整に浪費されることもしばしばです。

「1を10にする能力」を私は便宜上「技術力」と呼びます。これが高い人は「技術力」が高いと思うのです。

しかし世の中には「0を1にする能力」を持った人も居ます。そしてどちらかというと、「0を1にする能力」を持った人の数は少ないような気がします。

この能力を持った人は、以下のような特徴を持っています。

・親だろうが上司だろうが、とにかく人の言うことを聞かない
・与えられた仕事は最大限短い時間で終わらせるか、他者に丸投げする
・自分のやりたいことは夢中になってやる
・やりたくないことは原則としてやらない、やらされると仕方なくやるが、やはりたいていは他者に丸投げする
・規則正しい生活をしない
・気がつくと常に寝ているか、遊んでいる
・およそ真面目に仕事をしない
・プログラミングが趣味である
・趣味のための時間を会社で過ごす
・楽をできるものなら手段を選ばず、他人のライブラリだろうがWebサービスだろうが赤外線リモコンだろうが使う
・土日祝日、盆も正月も昼夜関係なく会社に居る
・生活の90%が趣味のために費やされる
・ごくたまにできた自分の仕事の成果をみんなに見せびらかすことに生き甲斐を感じている


まさに典型的なダメ社員です。
一般的には「給料ドロボー」とか「ごく潰し」とか言われている人です。

社員でありながら会社の仕事をせず、学習もしてないわけですから、社内NEETと呼ばれることもあります。

しかしこういう人間でなければ、全く新しいものをゼロから産み出したり、誰も辿り着いたことのない地平線を切り開いたりすることはなかなか難しいのではないかと思います。

上記を書き出して思ったのは、これは大学教授のライフスタイルに似ています(もっとも、大学の先生もいろいろと社会的に大変な仕事は多いようですが)。

全くなにもない状態から、何かを産み出す能力を、僕は便宜上「科学力」と呼んでいます。たとえなにかの組み合わせであったとしても、またそれが不安定なものであったとしても、あたらしい組み合わせ(や、見せ方)によって新しい結果を作り出すのはまさに実証科学的な手法そのものだからです。

科学力の高い人は、意外にも広告代理店に多く居ます。

彼らがとても大切にしている「発想力」というのは僕の言う「科学力」そのものです。
その土台に科学的知識があるか、そうでないかという違いであって、「発想力」とはすなわち科学力です。

どんなに技術力が優れた国があっても、科学力が低いと他国の後追いをするしかありません。

昔の日本は、技術力は高いけど、科学力は低いと思われていました。

ひとつひとつを丁寧に作ったり、それを最適化したりするのは得意だったけど、全く新しいものを作り出すのは苦手だったからです。

そういう分野ではやはりアメリカは世界で最も科学力の高い国なのかもしれません。
明らかに技術力は日本より下です。未だに自販機がまともに札を読めないし、ATMにお金を預けると夜中に警備員が一枚ずつ確認しないといけないのですから。

今の日本は科学力も評価されるようになってきています。
実は昔から科学力の高い人はいたのですが、日本の社会と言う物が彼らの能力を正当に評価できないような体質があったのです。その体質自体は今でもあまり変わってないのかもしれませんが。

会社としては、科学力のある人と、技術力のある人をバランス良く揃えて行かなければいけません。
それでもお金になるのは技術力のある人です。

だから中小企業には技術力の高い人が沢山居ます。

科学力は、すぐにお金には結びつきません。
だから中小企業で科学力の高い人を雇い入れるのは非常に勇気が要ります。

技術力は勉強すれば身につけることが出来ます。
しかし科学力は純粋にその人のライフスタイルや才能に寄与する部分が大きく、科学力のある人が生活するためには最低限の技術力が必要になります(プログラマーならプログラミングができること、広告クリエイターなら絵が描けるとか言葉を考えだせるとかの基本技術)。

今、かなりの好景気で求人市場が凄いことになってるようです。
どこも人材が足りないのです。

しかし、科学力のある人を募集している会社は殆どなく、技術力のほうがずっと重視されているように見えます。

最後の最後に企業発展の決め手となるコア・コンピタンスを作り出すのは科学力であって技術力ではない、という認識がまだあまり世間に広まっていないのかもしれませんが、アメリカと日本をそれぞれ単体の企業と考えた場合、アメリカの魅力は明らかに誰にも真似できない科学力であり、アメリカの発明したアイデアに従ってそれ以外の国が追従していくというのが現状です。

また、科学力のある人をどう扱っていいのか、解る人も非常に少ない、という印象も受けます。
やっぱりたいていの場合は「なんか凄く頭はいいけど、変人としかいいようがないダメ社員」という扱いを受けるか、厚遇されていても腫れ物のように扱われるか、非常に難しいところです。

面接で科学力のある人を見抜くのも至難の業です。

僕自身は今まで何度もそういう人を見て来たので、面接すればその人が科学力のある人か、単なる変人かはある程度見分けることはできますが、僕が死んでしまったら、僕の会社でその見分けが出来る人がいなくなってしまうのではないかと心配しています。

「ジョエル・テスト」はマイクロソフティらしく技術力の高い人材と環境を見抜くためのテストでしたが、是にあやかって僕はshi3zテストを提案します

・ 一日のうち平均何時間を趣味のプログラミングに費やすか
・ 最大で何ヶ月同じ趣味のプロジェクトに集中して打ち込んだか
・ なにかを作ろうと思ってから作り上げるまで最短何時間で、最大何時間か
・ うちの会社に来ても、とりあえず仕事はないけど、好きなことやっていていいって言ったらなにをしたい?
・ 今まで作ったプログラムは何個くらい?
・ 今まで作ったプログラムで、これは良く出来た、という自信作をいくつか教えて
・ 無人島にふたつだけもっていくものがあるとしたらコンピュータと他になに?

合格基準を書こうと思ったけど、それじゃあテストにならないので企業秘密ということで

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